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「なかだし 共の会」近況

nakadashi.exblog.jp

ポーランド、米国から「M1A1」戦車116両など追加調達

■ロシアに対する備えを強化!! NATO最大の戦車大国へ
 2022年、陸軍戦力の大幅な強化を相次ぎ打ち出していたポーランドが、アメリカ合衆国から総額14億ドルに及ぶ巨額の兵器調達を行うことになりました。
 目玉になるのは、中古の「M1A1」エイブラムス」主力戦車116両。戦車回収車も12両、戦車橋も8両調達します。
 ポーランドは、2022年だけで新型戦車を1200両以上、自走榴弾砲を600両以上も大量調達することを決めています。今回の追加調達によって、同国は近々戦車を1300両以上も調達することになります。

・NATO屈指の陸軍大国へ 米製M1「エイブラムス」戦車を追加調達 ポーランド(乗りものニュース 2023年1月6日)
 https://trafficnews.jp/post/123619

 ポーランドにとって、隣国ロシアの軍事力は極めて重大な関心事です。
 ロシアによるウクライナ侵略は2022年2月に本格化しましたが(注:2014年に勃発した最初の侵略でクリミア半島や東部3州がロシアにより不法占拠されています)、これはポーランドにとっても対岸の火事ではありません。現代とは思えないロシアによる蛮行の数々が明らかになり、ポーランドとしては「1939年の再来は絶対に阻止しなければならない」と意を決しただろうことは想像に難くありません。
 ウクライナでの戦訓から、無人機による偵察や、無人機を活用しての精密砲撃が効果を挙げている一方、濃密な防空網の下では敵味方とも満足な航空支援が受けにくいことが分かっています。結果として、第一次大戦のような塹壕戦も至る所で展開されています。
 防衛局面では塹壕や防御陣地に籠もる方法が選べますが、反攻作戦を展開するには、たとえ航空支援を受けられなくとも、自力で敵勢力圏に浸透し、前線を突破できるだけの機甲戦力が不可欠になります。

▲ポーランドが米国から中古の「M1A1」戦車を116両調達すると発表。既に最新型「M1A2 SEPv3(M1A2C)」250両の調達を決めていますので、「M1」だけでも336両調達することに。

 ポーランドは、保有している旧ソ連製の戦車をウクライナにまとめて供与しました。先述のように、反攻作戦を展開して侵略してきたロシア軍を追い返すためには、十分な数の戦車が必要だからです。
 もちろん、それではポーランドが保有する戦車が不足してしまいます。その戦力的な「穴」を埋めるのが、アメリカからの「M1」シリーズ調達であり、韓国からの「K2」戦車の大量導入(途中からポーランド国内での製造に切り換える)というわけです。
 戦車だけでなく、戦車と随伴して機動できる自走榴弾砲「K9」を600両以上も調達するというのも、侵略を受けた際の機動防御と、その後の反攻作戦を行う際に戦車などの機甲部隊と随伴して火力支援を実施する意図があるものと推察します。

# by nakadashi_tomo | 2023-01-09 18:30 | ミリタリー

米国、ウクライナに30億ドル以上の装備品を追加供与へ

■歩兵戦闘車「ブラッドレー」50両、兵員輸送車「M113」100両、自走榴弾砲「M109」18両……!!
 昨日、ドイツが歩兵戦闘車「マルダー」をウクライナに供与する方針を固めたことを記事しましたが、今度はアメリカ合衆国が30億ドル以上にも及ぶ追加支援を実施することを表明したというニュースが入ってきました。
 既報によると、アメリカは歩兵戦闘車「M2 ブラッドレー」と、「M2」の偵察型といえる騎兵戦闘車「M3 ブラッドレー」の供与を検討しているとあったのですが、国防省が公表した追加供与リストの内容はさらに大規模な支援でした。

・More Than $3 Billion in Additional Security Assistance for Ukraine(アメリカ合衆国国防省 2023年1月6日)
 https://www.defense.gov/News/Releases/Release/Article/3261263/more-than-3-billion-in-additional-security-assistance-for-ukraine/

 米国国防省のプレスリリースを直訳したリストを掲載すると……。

・500発のTOW対戦車ミサイルと25mm弾薬250,000発を搭載した50台のブラッドリー歩兵戦闘車
・100 M113装甲兵員輸送車
・55 地雷耐性待ち伏せ保護車両 (MRAP)
・138 高移動性多目的車輪付き車両 (HMMWV)
・155mm自走榴弾砲18門と弾薬支援車18両
・70,000 発の 155 mm 砲弾
・精密誘導式 155mm 砲弾 500 発
・遠隔対装甲地雷 (RAAM) システムの 1,200 155 mm ラウンド
・105mm 牽引榴弾砲 36 門と 105mm 砲弾 95,000 発
・120mm迫撃砲10,000発
・高機動砲兵ロケット システム (HIMARS) 用の追加弾薬
・防空用のRIM-7ミサイル
・4,000 ズニ航空機ロケット
・約2,000発の対装甲ロケット
・スナイパーライフル、マシンガン、グレネードランチャーと小火器用の弾薬
・クレイモア対人弾薬
・暗視装置および光学機器
・スペアパーツおよびその他のフィールド機器

 単に「ブラッドレー」となっているので、「M2」と「M3」の割合がどの程度なのかは不明ですが、対戦車ミサイル「TOW」500発と、25mm機関砲弾が25万発もセットで供与されるようです。「TOW」は有線誘導の対戦車ミサイルで、新型の「撃ちっぱなし型」ではないのですが、威力に関しては十二分な能力を有しています。
 旧式装備とはいえ「M113」が100両供与されるのも大きなポイント。反攻作戦を実施するのであれば、ドイツから供与される「マルダー」と、米国の「ブラッドレー」だけでは数的に十分とはいえないので、これは大きな助けになるでしょう。「MRAP」55両、「HMMWV(ハンヴィー)」138両も、手頃な輸送機材として役立つものと思います。
 また、自走榴弾砲「M109」18両、弾薬補給車「M992」18両、155mm砲弾5万発、155mm精密誘導砲弾500発もセットで供与。精密誘導砲弾は使いどころが限定されそうですが、弾薬補給車が随伴できるのであれば、機動戦闘における自走砲の価値は大いに高まるでしょう。

▲「M109」シリーズの最新型「M109A6 パラディン」と、弾薬補給車「M992」。ウクライナに供与されるのがどのタイプになるかは、続報待ちです。

 ちょっと驚いたのは、海軍の装備品である艦対空ミサイル「RIM-7 シースパロー」が供与兵器リストに入っていること。
 国防省のリリースには特に記載はないのですが、どうやら旧ソ連製の地対空ミサイルシステム「9K37 ブーク」(NATOコードネーム「SA-11 ガドフライ」)の発射機に載せて運用できる目処が立ったようです(いやもう、すごい魔改造ですよね……)。
 これが実現すると、ロシアが強行している巡航ミサイルや無人機による無差別攻撃を迎撃する有効な手段の一つになるものと思います。


# by nakadashi_tomo | 2023-01-07 12:00 | ミリタリー

ドイツ、ウクライナに歩兵戦闘車「マルダー」供与へ

■反攻作戦には重要な歩兵戦闘車
 昨日、フランスが装輪装甲車「AMX-10RC」をウクライナに供与する方針を固めたことを記事しましたが、今日はドイツが歩兵戦闘車「マルダー」を供与する意向を表明したというニュースが入ってきました。
 アメリカも現役の歩兵戦闘車「M2 ブラッドレー」と、「M2」の偵察型といえる騎兵戦闘車「M3 ブラッドレー」の供与を検討しているので、実現すれば西側諸国からの地上兵器の支援は一段階レベルが上がると考えて良さそうです。

・ドイツが慎重姿勢を転換、ウクライナに歩兵戦闘車「マルダー」供与へ(読売新聞 2023年1月6日)
 https://www.yomiuri.co.jp/world/20230106-OYT1T50053/

 「マルダー」は、1970年代に西側諸国で初めて普及した歩兵戦闘車。後に各国で登場する歩兵戦闘車に大きな影響を与えました。
 基本的には、戦場で歩兵を安全に輸送するための「戦場のタクシー」の一種ですが、旋回式の小型砲塔に機関砲と対戦車ミサイルを装備し、一定の攻撃能力を有することが特徴です。
 最初のタイプが登場してから50年以上経っている車両ですが、数次にわたる近代化改修を行っていて、現在でも一流の能力を有しています。

▲西側諸国における歩兵戦闘車の基本となった「マルダー」。度重なる近代化改修によって、今でも一流の能力を有しています。

 歩兵戦闘車は、主力戦車に随伴して行動して機動戦闘を展開します。単に歩兵を輸送するだけではなく、装備する火砲で降車した歩兵を援護したり、場合によっては積極的に戦闘に参加し、対戦車誘導弾で敵戦車を攻撃したりもします。
 ロシアによる侵略から粘り強い防衛戦を展開しているウクライナに対して、フランスが偵察任務に適した装輪装甲車を供与したり、アメリカやドイツが歩兵戦闘車を供与したりするということは、単なる防衛戦から反攻戦へと移行しようとしていることを意味しているのかも知れません。

 なお、アメリカもドイツも、地対空ミサイル「パトリオット」の供与を決めています。ロシアから巡航ミサイルや無人機による無差別攻撃を受けているウクライナにとって、こちらも心強い支援となります。
 日本も、ウクライナに対して「パトリオット」の供与を検討しているようです。


# by nakadashi_tomo | 2023-01-06 21:00 | ミリタリー

フランス、ウクライナに「戦車」供与へ

■それってもしかして「AMX-10RC」のこと!?
 フランスが、ロシアの侵略に徹底抗戦しているウクライナに対し、西側諸国として初めて「戦車」を供与する……との報道が!!
 フランスの報道機関によると、この「戦車」とは装輪装甲車「AMX-10RC」のことではないか、とのこと。

・フランス 西側諸国として初めて“戦車”をウクライナへ供与(乗りものニュース 2023年1月5日)
 https://trafficnews.jp/post/123617

 「AMX-10RC」は、1978年から配備が始まった6×6の装輪装甲車。48口径105mm戦車砲を装備する、強力な攻撃力が特徴です。
 装軌式の歩兵戦闘車「AMX-10P」と共通性を持たせて設計されたものの、「AMX-10RC」は無限軌道ではなくタイヤを装備。しかも、そのタイヤは固定式で(左右に曲げることができない=操縦席にはハンドルもない)、無限軌道と同様に左右のタイヤの回転数を変えることで曲がるという、珍しい方式を採用しています。
▲フランスがいう「軽戦車」とは、装輪装甲車「AMX-10RC」のことではないか……と、フランスメディアが報道。

 いわゆる「戦車」ではないとはいえ、105mm戦車砲を備える戦闘車両を供与することは、これまで西側諸国が引いていた一線を越えることになります。
 フランスとしては、「AMX-10RC」を含む既存の装輪装甲車を代替する偵察戦闘車「ジャガー」の配備が始まっているため、いずれ退役する「AMX-10RC」を手放しても問題ない、ということなんでしょう。
 また、うがった見方をすれば、これまで「戦車」は供与しないとしてきた他の西側諸国(具体的にはドイツ)に対して「早く決断しろ」と促す意味もあるのかも知れませんね。

# by nakadashi_tomo | 2023-01-06 00:00 | ミリタリー

「96式装輪装甲車」の後継車両は「AMV XP」に決定

実績豊富なフィンランド製8輪装輪装甲車「AMV XP」
 陸上自衛隊が運用中の8輪装甲車「96式装輪装甲車」の後継となる次期装甲車は、フィンランドのパトリア社が開発した「AMV XP」に決まりました。
 最終選考に残っていたのは、「AMV XP」と、三菱製「機動装甲車」でしたが、運用試験の結果「AMV XP」の優位性が明らかになっての選定でした。

・日本版「緑の悪魔」に? 北欧製に決定した次期装輪装甲車 日本の産業救う可能性も(乗りものニュース 2022年12月13日)
 https://trafficnews.jp/post/123260

 フィンランド・パトリア製の装輪装甲車「AMV」は、車体のモジュラー化を採り入れた新世代の装輪装甲車。
 基本となる車体に、任務ごとに必要となる装備品や砲塔を装着することで、さまざまなタイプを製造することができます。
 「AMV」の開発は1990年代後半に始まり、21世紀初頭から各国が導入。
 これまでに、フィンランド本国が約80両導入したほか、ポーランドが各型合計で800両以上をライセンス生産。クロアチア、スロベニア、スウェーデンなども採用しているほか、独自の兵器開発で定評がある南アフリカも採用するなど、寒冷な国から温暖な国までさまざまな自然環境の国々が採用し、運用実績は豊富です。
 今回の選定向けに「AMV」の最新バージョンである「AMV XP」の実車2両が納入され、運用試験に供されていました。

 一方、三菱が自社資金で開発していた「機動装甲車(MAV)」は、「16式機動戦闘車」と共通車台を有するファミリー車両です。
 当初からファミリー化構想に基づいて開発されているため、「16式」に続いての採用となるのでは……との見方もあったのですが、今回は不採用となりました。

 従来であれば、よほどの大差がない限り、国内メーカーが開発した機材を採用するケースだったものと思いますが、そうならなかったところが重要なのだろうと考えます。
 昨年のロシアによるウクライナ侵略以降、国際情勢は急速に悪化していて、日本を取り巻く戦略環境も相当シビアになっています。
 新規開発した機材を時間をかけて育て上げていく時間的余裕は失われていて、既に複数国での実績がある機材を調達する方が良い、という判断があったのではないか……と推察します。

■陸上自衛隊の装輪装甲車は2系統になる……?
 さて、今回「96式装輪装甲車」の後継として採用が決まったのはパトリア製「AMV XP」ですが、実は陸上自衛隊にはこれとは別に「共通戦術装輪車」という装輪装甲車のファミリー化構想があります。

・【陸上自衛隊】陸自戦闘車輌の革命児となるか。共通戦術装輪車に迫る(Arms MAGAZINE WEB 2022年12月8日)
 https://armsweb.jp/report/3817.html

 具体的には、「歩兵戦闘車型」「偵察型」「機動迫撃砲型」の3タイプが計画されているようで、昨年末「歩兵戦闘車型」(30mm機関砲を主兵装とする無人砲塔を装備)と「機動迫撃砲型」(「96式自走120mm迫撃砲」と同様、車体後部の戦闘室内に迫撃砲を装備/射撃時は戦闘室の天井を開けて後ろ向きに射撃)の2タイプの試作車両が目撃されました。
 「偵察型」は、「歩兵戦闘車型」に必要なセンサー類などを搭載するものとみられています。
▲「共通戦術装輪車」の「歩兵戦闘車型」と「機動迫撃砲型」の試作車両を思われる装輪装甲車が目撃されました。

 これらの車両は、既に導入済みの「16式機動戦闘車」と共通車台を利用していて、ファミリー化のメリットは大きいものと思われますが、同様にファミリー化を実現している「AMV XP」を導入することになるわけで、果たして2系統の装輪装甲車を並行して導入することになるのかどうかは不透明です。


# by nakadashi_tomo | 2023-01-03 12:00 | ミリタリー